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家庭の備蓄は水3日分で本当に足りるのか
結論――日数だけでは「足りる」と判断できない
発災直後に使う水を三日分用意しても、それだけで家庭の備えが完成するわけではない。三日分という日数は準備を始める目安にはなるが、実際に足りるかどうかは、家庭ごとの使い方や保管状態によって変わるからだ。
確認すべきなのは、容器に入った水の総量だけではない。飲用に回せるか、備蓄食の調理に水を必要とするか、停電や断水の中でも容器を取り出せるか、家族が保管場所を把握しているか。こうした条件を満たして初めて、備蓄水は非常時に使える在庫になる。
したがって題の問いは、日数という一つの数字だけでは答えが出ない。何日分あるかを達成目標にするより、用途と保管の条件を家庭ごとに確かめ、生活の変化に合わせて補充と点検を続けられる仕組みをつくることが重要だ。
見落とされやすいのは「量」より「使える状態」
同じ量の水を保管していても、役立ち方は家庭によって異なる。水を使わずに食べられる備蓄食が中心なら、調理に回す分を抑えやすい。一方、乾燥した主食や粉末食品などが多ければ、食事を用意するための水も必要になる。
保管方法も可用性を左右する。水を一か所だけにまとめると、その場所へ近づけない場合に取り出せない。重い容器ばかりでは、持ち運べる人が限られることもある。玄関付近、居室の収納、持ち出し用品など、用途に応じて置き場所を分けておけば、建物内の状況が変わっても対応しやすい。
ただし、分散した結果、家族の誰も全体量を把握できなくなっては意味がない。容器の種類、保管場所、入れ替え時期を簡単に記録し、誰でも確認できる状態にしておきたい。
備蓄を増やす前に「使い切れる仕組み」をつくる
備蓄は、買って保管した時点で終わるものではない。長く置くほど、存在を忘れたり、普段の食生活と合わなくなったりする可能性がある。これは水だけでなく、備蓄食全体に共通する問題だ。
家庭から出る食品ロスについては、次の量が把握されている。
| 区分 | 把握された量 | 対象時期・調査日 |
| 家庭由来の食品ロス全体 | 435703t | 2015年度、2018年8月3日調査 |
| 食べられる状態で捨てられた食品 | 161248t | 2015年度、2018年8月3日調査 |
| 食べられる部分を取り除き過ぎたもの | 100431t | 2015年度、2018年8月3日調査 |
| 食卓などで残されたもの | 120471t | 2015年度、2018年8月3日調査 |
この統計は備蓄水の廃棄量を示すものではない。示されているのは、2015年度に家庭から排出された食品ロスが435703tと把握されたという事実である。うち直接廃棄が161248t、過剰除去が100431t、食べ残しが120471tと、捨て方の内訳も分かれている。非常用として普段使わない品を大量に抱え込む方法では、点検忘れや廃棄を招きやすい。備蓄を長く維持するには、日常で使う品を少し多めに持ち、使った分を買い足す循環が現実的である。
水についても考え方は同じだ。保管期限だけを見るのではなく、容器の傷み、置き場所の変化、家族構成、普段食べている備蓄食との組み合わせを定期的に確認する。入れ替える水は掃除などに回し、無理なく更新できる流れを決めておくとよい。
家庭ごとの「足りる」を確かめる
備蓄水を点検するときは、まず保管している容器をすべて見える形にする。そのうえで、飲用、食事の準備、衛生の維持など、想定する用途を書き出す。備蓄食も実際に一度食べ、どの食品が水を使うのかを確かめる。表示だけを眺めるより、開封や調理を試した方が不足に気づきやすい。
さらに、容器を普段持ち運ぶ人が無理なく扱えるか、夜間や停電時でも保管場所へ行けるか、家族全員が場所を知っているかも確認したい。水があっても、開けられない、運べない、見つからないのであれば、帳簿上の備蓄にすぎない。
三日分という言葉を「ここまであれば安心」という終点にせず、「まず備えを形にする出発点」と捉えるのがよい。家庭の備蓄で本当に問われるのは、何日分という数字だけではない。必要なときに取り出せて、食事や生活に使え、無駄なく更新し続けられるかである。
出典
- 環境省「食品廃棄物等の発生抑制及び再生利用の促進の取組に係る実態調査」
https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003220146